Englishespaniolchinese

アルギン酸エステル

アルギン酸エステル(注1)は、アルギン酸の構成糖であるウロン酸のカルボキシル基にプロピレングリコールをエステル結合させた誘導体です。冷水や温水に良く溶けて、粘ちょうな水溶液となります。

同じく水溶性のアルギン酸ナトリウムの場合、pHが低かったりCaイオン濃度が高かったりする条件下では、それぞれ不溶性のアルギン酸やアルギン酸カルシウムに置換してしまうため、溶けなくなってしまいます。一方、食品の中には果汁飲料やドレッシング、発酵食品のようにpHが低いものや、乳製品のようにCaを豊富に含むものが多くあります。こうした食品を増粘させたり、安定させたりするとき、アルギン酸ナトリウムではうまく使うことができません。

果汁飲料、ドレッシング、乳製品の増粘、安定剤 果汁飲料、ドレッシング、乳製品の増粘、安定剤

このような、アルギン酸ナトリウムが苦手とする分野をカバーするものが、アルギン酸エステルです。アルギン酸エステルは、水に溶解した時点で酸性の水溶液となりますので、酸性の食品中でも溶解し、増粘・安定効果を出すことができます。また、プロピレングリコール基でマスクされたカルボキシル基は水中でイオン解離しないので、Caイオンがあっても架橋されにくく、したがって乳製品などの安定剤としても有効に利用することができます。

さらに、親水性のアルギン酸に親油性のプロピレングリコール基を付与したアルギン酸エステルは、他のアルギン酸塩にはない界面活性効果を持っています。アルギン酸エステルは増粘剤でありながら、油/水系の乳化安定剤としての機能を併せ持つ、ユニークな高分子多糖類です。
アルギン酸エステルは、構造中のカルボキシル基がエステル化している割合によって、溶液の性質や適する用途が異なります。どれだけのカルボキシル基がエステル化しているかは、「エステル化度」という数値で表され、用途に応じて管理されています。

注1:
アルギン酸エステルの正式な化学名は、アルギン酸プロピレングリコールエステルです。海外ではPropylene Glycol Alginateと言い、その頭文字を取ってPGAと呼ばれています。

食品添加物としてのアルギン酸エステル

カルシウムを多く含む食品の増粘剤、安定剤

上述の通り、アルギン酸エステルはpHの低い食品、Caを多く含む食品の増粘剤、安定剤として利用されています。

海外ではサラダドレッシングの乳化安定剤として、キサンタンガムと併用する形で用いられています。
また、乳酸菌飲料では乳タンパクが沈殿しないよう分散状態を維持する安定剤として高い効果が認められています。

ビールの泡沫安定剤

アルギン酸エステル独特の用途のひとつに、ビールの泡沫安定剤があります。発酵後のビールにごくわずかな濃度のアルギン酸エステルを添加すると、グラスに注いだときにきめ細やかで消えにくい泡をつくるビールになります。ヨーロッパ、南米などを中心に広く利用されています。

パン、麺の食感改良に

日本国内では、パンや麺などの食感改良に利用されています。特にパンの生地に対するアルギン酸エステルの添加効果は顕著で、ボリュームアップや復元性の向上などの優れた性能が認められ、今日では多種多様なパンに配合されるようになりました。

[食品への表示]

アルギン酸エステルは、日本ではアルギン酸ナトリウムなどと同じく指定添加物に分類されています。食品にご利用いただく際、原材料欄への表示は、用途名と物質名を併記して下さい。
アルギン酸エステルは、原料及び製造工程にアレルギー特定原材料を使用しておりませんので、アレルギーに係る表示は不要です。

用途名:
「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」「糊料」のうち、いずれか最も適切なもの
物質名:
「アルギン酸エステル」または
「アルギン酸プロピレングリコールエステル」(アルギン酸エステルの正式名称)
<表示例>
増粘剤(アルギン酸エステル)
糊料(アルギン酸エステル)   …など
[食品への表示に関するご注意]

上に示した表示法・表示例は、作成時点で得られた最新の情報に基づいて記載しておりますが、
内容の正確さを保証するものではありません。
関係法令の改正や、実際の食品に使用される他の成分との組み合わせによって、表示方法は随時変化する場合がございます。
食品への表示にあたっては、最新の法令に基づく適切な表示方法をご確認下さい。

[使用基準]

アルギン酸エステルを食品にご利用いただく場合には使用基準がございます。食品に対し、アルギン酸エステルとして1.0%以下になる濃度でご使用下さい。

アルギン酸エステルの安全性

アルギン酸エステルの安全性は国連機関(JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)で評価され、ADI(一日許容摂取量)が設定されています。
構造中にプロピレングリコール基を備えたアルギン酸エステルは、他のアルギン酸類と区別した評価がなされており、ADIは「0~25mg/kg体重」という値が示されています。
天然海藻由来のアルギン酸エステルは、BSEや遺伝子組換え、残留農薬、食物アレルギー等の影響のない安全な物質です。あらゆる場面で、安心してご利用下さい。

アルギン酸エステルのグレード分け

アルギン酸エステルは、アルギン酸ナトリウムなどと同じように粘度によってグレードが分けられています(注2)。また、用途に応じてエステル化度の異なる商品もラインナップされています。
なお、アルギン酸エステルはCaと反応しないため、M/G比に関する規格はございません。
その 他、特殊な品質規格のご要望については、弊社営業部までお問い合わせ下さい。

注2:
アルギン酸エステルの用途は非常に独特で、それぞれの業界に特有の管理規格が設けられることが多いので、粘度を測定する水溶液の濃度が1%ではない場合があります。