肉・プラントベースフード・固形油脂
アルギンは、ゲル化反応によって肉などの食品素材を接着・成形します。トランスグルタミナーゼ(TG)に代表される酵素反応とは異なり、肉や魚、野菜など、幅広い素材同士を接着することができます。
応用例・効果
※様々なタイプのアルギン酸類を「アルギン」と総称しています。応用例毎に正確な物質名を注記していますのでご参照ください。
食肉の接着・成形
どんな素材同士でも接着でき、加熱調理しても崩れません

アルギンはカルシウムと反応すると熱不可逆性のゲルを形成します。この反応を応用すると、肉と肉の間をアルギンのゲルで満たし、しっかりと接着することができます。
肉の接着には、トランスグルタミナーゼ(TG)に代表される酵素反応を利用した方法が最もよく用いられますが、酵素反応には基質特異性があるため、対象とする素材が限られます。一方、アルギンは素材の隙間をセメントのように埋めることで素材同士を接着させるので、素材の如何を問いません。肉の種類に関わらず、また魚や野菜など、相手が何であってもくっつけることができるのが、アルギンによる接着の特長です。
アルギンのゲル化には加熱や冷却の必要がありません。生の食材は生のままで接着・成形することが可能です。またアルギンのゲルは熱では溶解しないため、成形した肉を加熱調理しても接着状態が維持され、バラバラに崩れません。カゼインなどの乳由来成分を含んでいませんので、アレルギーの心配もありません。
- 【使用するアルギン】
- アルギン酸ナトリウム(商品名:昆布酸429)
- 結着剤
- 【推奨使用量】
- 具材に粉末でまぶす場合:結着する具材重量の1.2%
水溶液にして具材に混ぜる場合:6%水溶液を調製
プラントベースフード
海藻由来のアルギン酸で植物性のバーガーパテを作ることができます

近年、大豆などの植物性たんぱく質を原料とした「プラントベースフード」と呼ばれる加工食品が注目を集めています。プラントベースフードは、当初菜食主義者のための食品と考えられていましたが、昨今では持続可能な社会を実現するための、環境負荷を下げる技術としても注目されています。
プラントベースフードの中でも、畜肉の代わりに大豆などの植物性たんぱく質を使った「プラントベースミート」が特に注目を集めています。プラントベースミートの原料となる植物性たんぱく質は畜肉と違い、いくら混捏しても粘りが出ません。したがって挽肉を練り合わせたバーガーパテのような加工食品を作るためには、高い結着力を持つ「バインダー」が必要です。しかもそれは植物性の素材であることが望まれます。こうしたプラントベースミートのバインダーとして重宝するのが、海藻由来の素材、アルギンです。
アルギンは、「食肉の接着・成形」に記載したメカニズムと同じ原理で植物性たんぱく質を接着させ、バーガーパテを成形します。アルギンのゲル化には加熱・冷却の必要がないため成形までのプロセスがシンプルです。ゲル化が進んだ成形物には粘りがなく取り扱いが容易で、そのまま冷凍保存することもできます。アルギンのゲルは耐熱性ですので、成形したバーガーパテを焼成しても形が崩れません。また焼成後の食感は、アルギンのM/G比や粘度、あるいは配合量を変えることで調節が可能です。
- 【使用するアルギン】
- アルギン酸ナトリウム(商品名:昆布酸429S)
- プラントベースフード
- 【推奨使用量】
- 全重量の2~3%
固形油脂(豚脂代替物)
ヘルシーな植物性の固形油脂で、豚脂を代替できます
ウインナーやボロニアソーセージなどに練り込まれている脂の塊(豚脂)を植物性の固形油脂で置き換えると、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取量を減らすことができます。
植物性の固形油脂といえばマーガリンやショートニングなどの「部分硬化油」が実用化されていますが、豚脂とは明らかに性状が異なるため、そのまま代替品として利用することはできません。そこで、豚脂とよく似た固形油脂を加工するために、アルギンが使われます。
アルギンを使った固形油脂は、アルギン水溶液と植物油の乳化液にカルシウムを与えてゲル化させた「エマルジョンのゲル」です。これを豚脂の代替として利用すると、次のようなメリットを得ることができます。
- コレステロールや飽和脂肪酸の摂取量を抑え生活習慣病を予防できる
- 化学修飾(水素添加)しないためトランス脂肪酸の心配がない
- 半分が水分なのでカロリーを抑えられる
- ゲルの形状を自在にコントロールでき扱いやすい
- アルギンのゲルは耐熱性があるため加熱しても溶けて崩れる心配がない
- 熱でエマルジョンが崩壊すると油脂が液体となり、加熱した豚脂からラードが溶け出す様子を再現できる
- 【使用するアルギン】
- アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル(商品名:昆布酸ヘルシー)
- 昆布酸ヘルシー
- 昆布酸ヘルシーを用いた植物油の固形化技術
- 背脂風ゲルの作り方
- 【推奨使用量】
- 固形油脂の場合:全重量に対して5~7%
背脂風ゲルの場合:全重量に対して0.3~1%